日記 7/19(水) イングウィエ
日記ーーーーーー〜
勉強中は基本ラジオか音楽を聴いている。音楽は最近だとマイルスのアルバム(アガパン以外のライブは除く)を時系列順に全部聴いていくというのをやっていて、今はマラソンセッションの中盤(「Relaxin'」)。マイルス・デイヴィス・クインテットの「Relaxin' With the Miles Davis Quintet (Remastered)」をApple Musicで
ジャズを聴き始めた当初はマイルスの良さが全く分からなかったけど、ハービーやウェザーリポートは好きだったので、とりあえずマイルスバンドにいた人達を聴いていずれマイルスの良さが分かればいいやと思っていた。これは今思い返すと本当にいい戦略だった。ジョン・マクラフリンのmahavishunu orchestraやshakti、ハービー・ハンコックのhead huntersやmwandishi、トニー・ウィリアムスのlifetime、その他諸々。しかし今日したいのは音楽についての話ではないのでこれはまた後日。
冒頭で書いたように自分は勉強する時は音楽かラジオを聴いている。ということで最近聴いたラジオログ。芸人ラジオが多め。
1.「ヤーレンズのラジオの虎」(GERA)
今年の初めくらいから聴き始めて、しばらくはこれを聴きながら入眠していた。丁々発止のやりとりが面白い。最近はマンネリ気味な気もするが...
下品すぎる時と熱い時がある。
https://youtube.com/playlist?list=PLmdp8GSN8hy_nqqVcsHukrUIL2KT5hw2b
3.「ゆる言語学ラジオ/ゆるコンピューター学ラジオ」(Youtubeとpodcast)
オモロい。たまにノリがだるい。
4.「きしたかののブタピエロ」(YoutubeとPodcast)
5.「良い夜を聴いている」(Podcast)
「怖い夜を聴いてる」はホラー関連にちょっとでも興味があれば聴いて損はない。https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E8%89%AF%E3%81%84%E5%A4%9C%E3%82%92%E8%81%B4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B/id1584579173
6.「こんなん読みましたけど」(Podcast)
日記 7/6(木) 「被虐心の坩堝」
久々の日記。そもそも日記に久々という概念を導入すべきでないことは百も承知だが、忘れてしまったものは仕方ない。過去はただ泡沫の如し。過ぎ去ったものを悔やんでも仕方ない。
最近は相も変わらず自分の被虐心に火をくべて暇を潰している。暇で無いはずの時間でさえ、何もせず、頭の中だけで過去の記憶をほじくり返して、他責と自責のラリーを繰り返していればそれは暇な時間なのだ。こんな事はさっさとやめて、勉強に集中すればいいのだが...
ご存知の通り、自分は図書館狂いである。読書が趣味になってからようやく気付いたが、本というものは高い。シャレにならないくらい高い。そして追い打ちをかけるのが紙の価格高騰である。文庫本でさえ1500円越えが当たり前になってきている(東京創元の平井呈一翻訳シリーズを見よ)。しかしそこで救いの手を差し伸べてくれるのがそう、図書館である。自分1人では到底買えない大型本や市場価格が高騰している絶版本が一銭も払わず(実際は区税という形で払っているが)カード一枚で(いやカードがなくとも)借りれて読めてしまうのである。私ほどになると、ネットで気になる本を見つけるとすぐに図書館にあるか検索して最寄りの図書館に取り置きしてもらうのである。最も新宿区の財力を感じる瞬間だ。そして借りた本の殆どは開きもせず帯文を見てニタニタするだけで返してしまう。ワシは貴族や!!
ということで、ここ半年で借りた(税金で買った)本の中で読んだ読まないに関わらず良かった本を紹介。
1.オクテイヴィア・E・バトラー「血を分けた子供」(藤井光訳)
・近年再評価が著しいSF作家と言えばやはりこのひとだろう。今まで翻訳は30年前に「キンドレッド きずなの召喚」があっただけで、それも遠の昔に絶版という寂しい状況だった。ところがここ数年、アフロフューチャー文脈でディレイニーとともに新たな位置づけをされたことで、日本でも関心が高まり「キンドレッド」が河出から文庫化され出版。古書ワタナベで買った。そしてそのすぐ後に短編集(これ)が出た。表題作は80年代傑作選に収録されているが、新訳されて収録。既に内容はほとんど覚えていないが、作品以上に併録されたエッセイ「書くという激情」がとても面白かった記憶がある。八月には竹書房から「種播く人の物語」と「才ある人の物語」が同時に出版されるとか。楽しみ。
続きはまた後日
12/21(火)日記 「ベストSF2021」(大森望編)
・久しぶりにSF年間ベストを読んだ。以前は自分に合わないものがあると途中で読むのを止めていたので、読み切ったのはこれが初めてかもしれない。そして初竹書房。年間ベストなどのアンソロジーの魅力は、収録作品の面白さは勿論、解説が豊富であること。伴名練編「日本SFの臨界点」の解説は自分がSFを読み始めるにあたってとても役に立った。本書でも大森望が2020年に出版されたSFについて網羅的に紹介している。
・「この小説の誕生」 円城塔
「小説を書くことを書く」はなし。殆どエッセイに近い。google翻訳に日本語を打ち込み、訳された英文を更に和訳し、そのニュアンスの若干の違いを延々と語る。作品の面白さと言うよりは円城塔がダラダラと1人で語っているような質感が良かった。
異常論文ブームの発端になった作品。「信仰は質量を持つ」というトンデモ論を発案者のクランツマンの人生ととも伝記形式で語る。クランツマンのモデルはスウェーデンボルグなのかなと思った。クランツマンがもし実在していたら、水木しげるの「神秘家列伝」に名を連ねていただろう。
・「人間たちの話」 柞刈湯葉
これはもう読んでいたが、内容をさっぱり忘れていた。「人間たちの(都合の)話」
・「どんでんを返却する」
宮崎夏次系の「培養肉くん」ぽかった
・「全てのアイドルが老いない世界」
1番好きだった
・「循環」
面白くはないが、文章が好きだった
「鬼と踊る」 三田三郎著 感想
1はじめに
初めて歌集を読んだ(買ったのは山尾悠子『角砂糖の日』に続いて二作目)。私は普段小説ばかり読んでいるが、『鬼と踊る』に関してはツイッターで知り合った鴨嘴&孔雀愛好家のペガサス氏(※自称)が猛烈にオススメしていたため興味を持った。ペガサス氏には他にも『針葉樹林』(石松佳著)・『鳥類学フィールドノート』(小笠原鳥類著)など、私が今まで興味を持たなかった短歌・詩の優れた作品を紹介してもらっている。
私は生まれてからずっと築地や四谷荒木町など飲み屋街のすぐ側で暮らしてきた。まだ酒を飲める年齢にはなっていないが酔っ払いは沢山見てきし、その中には路上で吐く者、眠る者、些細なことで喧嘩を始める者もいた。だから三田作品の通奏低音である「酒」「ダメ人間」は私にとって馴染みの深いものであり、親しみを抱いた。
2好きな歌をいくつか
土下座にも耐えられるはず全身で地球を愛撫すると思えば
仕事はただのプレイで謝罪や土下座もその内の一つに過ぎない。仕事はそれぞれの役割の中で演じるただのプレイであり、やりがいを求めたり責任を感じる必要はない。だから土下座をするあなたも罪悪感を感じたり仕事相手に憎悪を抱かなくていい。ただ全身で地球を感じる。私(あなた)はただ全力(無心)で地球(宇宙)の恋人(セフレ)を演じ(感じ)そして同一化を経て赦しへ至るのだ。謝罪(祈り)は常に性的である
瞳孔が開いたコメンテーターの言うことだけは正座して聞く
これは意味がよく分からなかったが、瞳孔が開いた(異常な)コメンテーターと言うと思い出されるのは筒井康隆の『公共伏魔殿』や『俺に関する噂』で、そういった想起されるイメージ含め何か強烈な短歌だ。
うっかりと同志のように見てしまうソーラーパネルに降る大雨を
この歌集の中で一番好きかもしれない。
ソーラーパネルは水を吸い込まない。基本斜めに設置されているから雨は貯まらず流される。ソーラーパネルが社会であるとすれば雨(私たち)は社会にとって必要とされず安定した生活もままならない。そんな悲哀が感じられる。
不味すぎて獏が思わず吐き出した夢を僕らは現実と呼ぶ
獏は中国から伝来した伝説上の生き物で人の夢を食べて生きると言われている。悪夢を見た後に「(この夢を)獏にあげます」と唱えると同じ悪夢を二度と見なくなると言う。そんな獏でさえも吐き出してしまう様な酷い悪夢を我々は生きている。あるいは現実とはその様な苦しいもので、苦しいからこそ現実なのだという意識が我々のどこかにあるのかもしれない。
交通量調査の男カチカチと心の中で起爆しながら
道を歩いている時、高級車を見かけると親指で起爆装置のボタンを押して車を粉々に吹き飛ばす妄想をよくしている。小三までは家が高速の上にあったので、毎日ベランダに出ては下を通る車を爆発させていた。私は交通量調査の仕事に向いていると思う。
段階を踏んで心を折ってくる合理主義者の縁なし眼鏡
私の父親
極度まで抽象化された父さんが換気扇から吹き込んでくる
「暑苦しい」の最も婉曲な表現。「抽象化された〇〇が」は日常で使いたい。
読書記録 上半期読んだ小説(海外編)
今年の上半期に読んだ小説の中で良かったものの感想
あらすじ
・惑星ソラリスを覆う意志を持った海の謎を解明するため、ステーションに送り込まれた心理学者ケルヴィンは研究員の変わり果てた姿を目にする。ケルヴィンもやがてソラリスの海がもたらす現象に囚われていく。ディスコミュニケーションの極地
あまりにも有名なSFの古典名作。過去にはタルコフスキーが監督で映画化されている(余談だけどタルコフスキーの「ノスタルジア」は開始30分で寝落ちした)。ソラリスと向き合い、ソラリスによってもたらされた現象により自らの内面に向き合い、次第に狂って行く描写が圧巻。また途中で出てくるディティールの細かいソラリス学についての記述は先月(私のTLで)話題になったSFマガジン「異常論文特集」に出てきてもおかしく無いような強度がある。いずれまた読み返したい。そういえば今年はレム生誕100周年という事でレムの作品が新たに出版されるらしい。
https://twitter.com/kokushokankokai/status/1405808778788888576?s=21
「あなたの人生の物語」テッドチャン著 朝倉久志&その他訳
・今年、2作目「息吹」が「SFが読みたい!」の年間ランキング海外部門で1位となったテッドチャンの第一短編集。既に21世紀の古典SFと言われているとかいないとか。表題作は「メッセージ」という名前で映画化されている。音楽はヨハンヨハンソンが担当。感想は以前書いたので割愛するが、
1番のオススメは「バビロンの塔」で「BLAME!」とかが好きな人には響くかもしれない。
「白い果実」 ジェフリーフォード著 山尾悠子、金原瑞人、谷垣暁美訳
あらすじ
悪夢のような理想形態都市を支配する独裁者の命令を受け、観相官クレイは盗まれた奇跡の白い果実を捜すため属領へと赴く。待ち受けるのは、青い鉱石、楽園への旅……
・過去に世界幻想文学大賞を受賞した三部作の1作目。なんと幻想文学の大御所山尾悠子が訳で参加している。次第に人を硬直化させる青い鉱石、若い未亡人、凍った旅人、賢い機械仕掛けの猿を従えた兄弟の看守、水晶とサンゴの都市etc...もう世界観が大好き。後主人公がヤク中ってのがいい。
読書記録 「ホテル アルカディア」石川宗生著
デビュー作の「半分世界」(短編集)が最高だったので、去年出たばかりの本作も買おうと思っていたが、友人が先に入手したということで拝借した。あらすじを読んだときは長編かと思ったが、実際読んでみると長編の形をした連作集という感じで、全体を貫く大きな物語とそれに纏わる小さな物語の集合で出来ている。前作でもそうだが、SFというよりは幻想小説といった趣が強く、描かれている物語も筒井っぽいスラップスティックものやオマージュもの、大前粟生っぽいもの、星新一っぽいもの、もろ南米文学っぽいものなどあり、要するに私が好きな物が全部詰まっている。ただ前作「半分世界」は全ての短編が細部まで作り込まれていて石川宗生の奇想をじっくり味わえたのに対し、本作は一個一個の物語がより短めで、世界観の作り込みがほんの少し甘くなっているように感じた。いずれにしろ全体的にはとても面白いことに変わりはない。三作目の「四分の一世界旅行記」も期待大。要約と各話あらすじ&感想はまた後日