読書記録 「ホテル アルカディア」石川宗生著

f:id:tanakamori8:20210620005730j:image

デビュー作の「半分世界」(短編集)が最高だったので、去年出たばかりの本作も買おうと思っていたが、友人が先に入手したということで拝借した。あらすじを読んだときは長編かと思ったが、実際読んでみると長編の形をした連作集という感じで、全体を貫く大きな物語とそれに纏わる小さな物語の集合で出来ている。前作でもそうだが、SFというよりは幻想小説といった趣が強く、描かれている物語も筒井っぽいスラップスティックものやオマージュもの、大前粟生っぽいもの、星新一っぽいもの、もろ南米文学っぽいものなどあり、要するに私が好きな物が全部詰まっている。ただ前作「半分世界」は全ての短編が細部まで作り込まれていて石川宗生の奇想をじっくり味わえたのに対し、本作は一個一個の物語がより短めで、世界観の作り込みがほんの少し甘くなっているように感じた。いずれにしろ全体的にはとても面白いことに変わりはない。三作目の「四分の一世界旅行記」も期待大。要約と各話あらすじ&感想はまた後日