「あなたの人生の物語」テッドチャン著 感想

1度pomeraに書いたけどデータの送り方が分からないので、再記

「バビロンの塔」・・・基本的に塔とか高い建築物が出てくるSFが好き。この物語は世界は循環していて1番高い場所が1番低い場所の下にある。その逆も然り。ここでは円筒状と表現されている。塔を登る際の細かいディティールとかが良い。非現実なものを詳しく書いていく事でリアリティをもたせられるのがSFの強み。

 

「理解」・・・事故で損傷した脳が、新たに開発された治療薬の影響で驚異的に回復・進化する超能力もの。東京喰種を連想させられる。治療薬を開発したのが日本の会社で20年前まで科学技術の象徴といえば日本だったんだなとしみじみ。

 

・「ゼロで割る」・・・天才的な数学者がこれまで積み上げられてきた数学の法則を全て無意味にしてしまうような法則を発見してしまう話。あまり好きではない。これ読んでる時に食べたベトナム料理屋ので春雨が美味かった。

 

あなたの人生の物語」・・・ファーストコンタクトものだが戦闘がなく、未知の生物との意思疎通の過程が科学的に紡がれていく。主人公の女性はエイリアンの文字を研究する過程で未来が見通せるようになる。すごく都合のいい話に思えた。あまり好きではない。

 

「七十二文字」・・・時代改変物。名辞という、それを差し込む事で対象を操作できるカードが重要なアイテムになっている。ゴーレムという古典的モチーフを上手く使ってサスペンス風に仕上げている。

 

「地獄とは神の不在なり」・・・天使が厄災と同時に奇跡をもたらす世界の物語。収録作の中では1番重厚。天使に妻の命を奪われた夫のニールが色々な集会に行く場面はファイトクラブを思わせる。

 

「顔の美醜について」・・・人間の顔の美醜を判断できなくさせる装置カリーを巡る出来事。ルッキズムやポリコレなど今の時代と完全に合致した作品を20年前に書いているのは驚き。広告会社や化粧品産業が仕掛ける妨害工作などもリアル。主人公の女子大生のキャラクターが魅力的。

 

「人類化学の進化」・・・科学雑誌ネイチャーに掲載された異常論文風のフラッシュフィクション。似たような話を「世界SF作家会議」でケンリュウがしていた気がする。